『BRUTUS』台湾特集、なぜ人気?—— 西田善太『BRUTUS』編集長 ✕ エッセイスト・一青妙対談

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情報誌『BRUTUS』の台湾特集号の増補改訂版が3月15日に出版され、再び大きな話題を呼んでいる。昨年7月に発売された台湾特集号は完売店が続出するほど異例の大ヒットとなり、台湾政府からの台湾観光貢献賞も受賞した。さらに増ページした増補改訂版では、新たに震災に遭った花蓮などの情報も加えている。台湾で大きな賛否両論の議論を呼んだ台南・国華街の表紙は、今度は夜の景色となって再登場している。『BRUTUS』西田善太編集長と、台南市親善大使でnippon.comコラムニストの一青妙氏が対談し、『BRUTUS』台湾特集の全てを語り尽くした。

花蓮と墾丁を加えて台湾全体の魅力を伝える

一青  今回の増補改訂版には花蓮や墾丁が新しい内容として追加されています。地震で打撃を受けた花蓮や、現在、観光客が減っている墾丁を励まそうと考えたのでしょうか。

西田善太編集長(撮影:野嶋 剛)

西田  追加の都市は地震の前に取材していましたが、地震が起きてから発売日を2週間ほどずらしました。2月26日発売を3月15日に。花蓮について何か加えるかどうかの判断をするためです。ただ、その後、地震の影響は収まっているのに、風評被害がひどいという話を観光局の方から聞いたので、あえて増補改訂版の中では地震については語らないでいます。地震のことを忘れた頃にこれを読んで花蓮に行こうという人もいるはずですからね。基本的には、日本人がまた台湾に行こう、花蓮に行こうという内容になればいいと思っています。ただ、取材したお店などに連絡がつかないこともあって心配しました。墾丁については、このシリーズでは都市中心ですが、「台湾はどこに行っても全部面白い」というのは基本なので、自然が美しい墾丁も入れてみたいと思いました。

台湾との縁は「ラリーニッポン」の台湾一周

一青  私も台湾の各地を日本に知ってもらいたいというのは大賛成で、これまでも台南や台湾の東海岸、それから「環島」について書いた本も出版しています。台湾の魅力は、台北への2泊3日だけでは伝わらない、各地をもっと日本の人に回ってほしいと思っているからです。西田編集長と台湾のご縁はどのあたりからでしょうか。

西田  台北は何度も行っていましたが、1年半ぐらい前に、クラシックカーラリー「ラリーニッポン」のイベントに呼ばれてMGBという古いクラシックカーに乗って台湾を一周しました。100台近いクラシックカーが台湾を4日かけて一周するラリーです。僕らのMGBは本当によく故障する車で(笑)、1日1回、致命的な壊れ方をするんですが、そのたびに、どんな都市でも町の人々がわらわらと集まってきて、何時間でも根気よく修理に付き合ってくれたんです。工具を持ってきたり、部品を探してきてくれたり。期せずして、台湾の人たちの優しさとか人の良さに毎日触れることができました。

そういう経験もあって、特集で台湾の良さ全部を伝えられたらと考えました。見尽くして、網羅して魅力のある場所を選び抜いたのが今回の特集です。

個人的には、花蓮が一番いい。出会いがドラマチックだったんですよ。車で夜に到着し、暗闇の中に浮かぶタロコ渓谷の坂を車で上ってホテルに泊まりました。ゴツゴツした山が迫ってくるので、すごく怖かった。ところが翌朝、朝の光の中では打って変って美しい景色!山を下りながら感動しました。ホテルでは先住民の人たちが歓迎のダンスを披露してくれて、とても人間業とは思えない激しい踊りも見られて、楽しい体験をさせてもらいました。

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