便利さと危なさが同居する台湾のタクシー

経済・ビジネス

台湾のタクシーシステム

タクシーといっても世界各国でその管理システムは全く違う。システムの違いからサービスに不満を持ち大きなストレスになることもある。ここでは台湾のシステムについて説明する。

まず日本と大きく異なるのは、ドライバー自身が車を購入することだ。タクシードライバーは車を購入し「車行」という交通会社に所属し、タクシー運転車登録証を得る。車行はドライバーから加盟費として毎月1000元〜2000元を徴収する。車行の主な収入は、このドライバーからの加盟費となる。ここが日本とは大きく異なる。日本のタクシードライバーはタクシー会社の社員として会社から給料をもらうため、会社がドライバーに対し車を貸与しサービス、接客態度などの訓練および管理を行う。これは雇用関係にあるからこそできる管理だ。だが、台湾では車行はタクシードライバーから加盟費用をもらう立場である。多くのタクシードライバーが所属することで利益が上がる構造だ。そのため車行とドライバーの関係は雇用関係にない。車もドライバーのものだ。そのため、車行が日本のタクシー会社のようにドライバーに一定のサービス水準や、接客態度を求めることは簡単ではない。なお、台湾では6年間車行に所属してタクシードライバーとして務めることで、個人タクシーとなることができる。

このような構造から、車行は仮に問題のあるドライバーだとしても、所属させることで収入が得られるため、タクシードライバーが車行を首になっても新たな仕事を探すのは比較的容易である。さらに昨年、最高裁判所により、行政が詐欺や窃盗の罪で有罪になったタクシードライバーに対し、職業免許(日本でいう二種免許)剝奪処分を行うことは憲法に保障されている仕事権に照らし、違憲との判断が出されたため、悪質ドライバーから職業免許を剝奪することは非常に困難だという問題もある。これに対し、台南市公共運輸処では、悪質ドライバーの撲滅に向け、違反を繰り返すごとに罰金が高くなる累進罰金制度を取り入れ、厳罰化を進めている。

次に料金体系を見てみる。地域によって基本料金は異なるが、台南では初乗りが1.5キロメートルで85元。250メートルごとに5元追加される。夜間は午後11時から翌朝の午前6時までは20%の割増料金となる。トランクを利用する際にはトランク利用料金として10元が必要となる。それ以外にも旧正月期間は、各地域で特別料金が加算される。台南では基本料金に50元が追加となる。こうしたことを事前に知っておくだけでも、無用なストレスや不満を感じることなく旅行期間を快適に過ごせるだろう。なお台南市公共運輸処では、特別料金などの表示を中国語および英語、日本語で表示するよう努め、旅行者が安心して安全にタクシーを利用できるよう、車行などに多く働き掛けている。

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