便利さと危なさが同居する台湾のタクシー

経済・ビジネス

安く便利な台湾のタクシー

台湾のタクシーは地域によって違いはあるが、初乗り料金が70元〜85元(1元約3.7円)と非常に安く、使い勝手が良い。特に地下鉄やバスといった公共交通システムが発達していない台北以外の地域では、タクシーが主な公共交通システムとして活躍している。そしてタクシー運転手にはフレンドリーで親切な人も多いが、一方で料金メーターが動いていない、遠回りをするといった、タクシーにまつわる問題も後を絶たない。過去には遠方に連れ去られ、暴行を加えられたなどの被害、トラブルもあった。もちろん観光誘致に力を入れている台湾政府、自治体も懸命に安全強化に力を入れているが、まだまだ改善が必要である。

実際、私が昨年11月に出会ったタクシー事件は、その悪質性から全国ニュースになるなど大きなニュースとなった。

私が悪質タクシーと遭遇したのは、台南の一大観光地である花園夜市からホテルまでの帰り道である。通常、流しのタクシーに乗車するより、タクシー乗り場から乗車した方が安全であることから、タクシー乗り場の誘導員に任せ乗車したのだが、これが大きな間違いだった。まず乗車して驚いたのは、片側1車線の道路を時速85キロメートル近くで走行し、まるでカーレースのように前の車を追い越し始めたことである。非常に危険な行為であり、仮に事故になれば命に危険も及ぶ。同乗していた日本から観光に来ていた友人も非常に怖がっていた。筆者は何度も運転手に速度を下げてゆっくり走るよう注意したが、全く無視された。そしてそれ以外にも信号を無視し、猛スピードで交差点に入る危険走行もあった。恐怖の走行が終わりやっとホテルに着いたと思ったら、ここからまたさらに問題が発生した。通常料金の範囲より高額の料金を請求されたのである。よく見たら料金メーターが動いていなかった。そのことを指摘すると、料金メーターは故障しているが台南市では夜間は固定料金だという答えが返ってきた。実際にはそのようなルールが存在しないことは、台南に長く生活している私はよく知っている。そこでタクシー車内に掲示が義務付けらえている運転車登録証が掲示されていなかったので見せるように要求したが、これも家に忘れてきたと言って拒まれた。この時点で私も腹を決め、料金を払う前に車のナンバーの写真および車体に記載されているタクシー会社番号を写真に撮り、その後に言われた通りの料金を支払った。その際渡された領収書に記載されたタクシー会社に電話したところ、この領収書は他のタクシー会社が発行したものだった。同伴していた友人の楽しい旅行を台無しにしてしまい申し訳ない思いでいっぱいだったが、友人から「台湾は非常に治安が良く安全だと聞いていたが、1人ではタクシーに乗れないね」と言われたのが残念でならなかった。なお、この事件には思わぬ後日談がある。

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