台湾総督府庁舎(現・総統府)の建築秘話

文化

最高統治機関として君臨

起工式は1912年6月1日に挙行された。敷地面積は約7148平方メートル。5階建てで、当時、台湾で最も大きな建物だった。作業は毎日、午前4時半から行われ、交代制で深夜まで続けられた。そのため、騒音に悩まされて住民が不眠症になったとか、時間厳守が徹底されていたため、付近一帯では時計が不要だったなどという逸話が残っている。

起工から3年あまりが過ぎた15年6月25日、主要部分の工事が終了し、同日、上棟式が挙行された。建物は4年後に完成、時の台湾総督は明石元二郎だった。

正面に立つと、帯状に配された花こう岩の白石が赤れんがの壁面にアクセントを付けている。こういったスタイルはイギリスで流行したクイーン・アン様式を基調とし、「明治の建築王」と称される辰野金吾が好んだもの。いわゆる「辰野式」と呼ばれるものであった。

庁舎内の部屋数は152に及んだ。総督官房室の他、内務局、文教局、財務局、殖産局、警務局などの部署があった。勤務する職員は常時1000人程度と言われ、出入り業者らを含めると、1500人を超える人が庁内で働いていた。

建物全体が風通しと日当たりを考慮した構造となっている(撮影:片倉 佳史)

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