「在日台僑」と「在日華僑」の間で——在日中華民国国籍保持者/台湾出身者をどう位置づけるか

政治・外交

岡野 翔太 【Profile】

在日「台湾人」/「中華民国国民」組織の現状

さらに日本では、長らく台湾出身者は「中国人」として『在留外国人統計』に集計されてきた。中国の改革開放により新華僑が急増する1980年代まで「在日中国人」(在日華僑)の約半分は台湾人が占めていた。それまで、在日台湾人は総じて旧来の在日華僑をけん引する存在であった。こうした在日華僑を取りまとめる代表的組織に、45年頃より日本各地で成立した「華僑総会」がある。ところが、49年以降の中台関係が、華僑総会の組織系統に影響を与え、組織は親中華民国の総会と親中華人民共和国の総会に分かれた。むろん、それは中国人と台湾人で分かれているのではない。

例えば、東京には「中華民国留日東京華僑総会」と「東京華僑総会」が存在し、前者は親中華民国の組織で後者が親中華人民共和国の組織となる。ところが両者とも長らく台湾出身者がけん引してきた。ではなぜ在日台湾人が親中華人民共和国の組織をけん引してきたのだろうか。それは、台湾共産党のような日本統治下の台湾における左翼運動家とも深い関わりを持っている。彼らは台湾独立運動家と同様、国民党からにらまれ長らく台湾へ帰れずにいた。たとえ今日、台湾社会が戒厳令下を脱し自由になったとはいえ、国民党一党体制下で長い間伏せられていた存在である彼ら在外台湾人の側は、今の台湾社会から投げ掛けられる「不自然な存在」というレッテルからは免れられないだろう。

では親中華民国華僑総会にはどういう人びとが存在するだろうか。ここの規約では、「中華民国国籍保持者やその帰化者」が会員の対象となっている。日本各地には約30の親中華民国「華僑総会」が存在し、地域によっては「中華総会」、「台湾総会」といった呼称を使用している。いずれも中華民国旅券の申請代行業務や会員間の親睦、東京・横浜・大阪にある中華民国系華僑学校への支援、双十国慶節祝賀会の開催、現地の県市会議員との交流などを行っている。しかし、台湾の本土化を追求する在日台湾人の中には、同組織に対して「中華としての利益(ナショナリズム)」を重視しているとの見方を示す者も存在する。

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岡野 翔太OKANO Shōta経歴・執筆一覧を見る

大阪大学人間科学研究科博士課程。台湾名は葉翔太。1990年兵庫県神戸市生まれ。1980年代に来日した台湾人の父と日本人の母の間に生まれたハーフ。小学校、中学校は日本の華僑学校に進む。専攻は華僑華人学、台湾現代史、中国近現代史。著書に『交差する台湾認識-見え隠れする「国家」と「人びと」』(勉誠出版、2016年)。

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