台湾も日本も、都市に暮らす30代はみな孤独——日本公開の『52Hzのラヴソング』魏徳聖監督が語る新作の魅力

文化 Cinema

映画を撮る楽しさを思い出させた作品

作品の肝は、2人の同性愛の女性カップルである。演じるのは、人気女優の張榕容と李千娜。最初は不幸な境遇にいるという設定で始まった主役の4人の男女に比べて、同性愛の2人の方が、はるかに幸福で、自信を持って愛し合い、周囲の人たちを励ましているように見える。

「映画では、彼らは一番楽しそうに生きています。彼らは正常な人たちを励まし、愛情の価値を信じさせようとします。立場が逆転しているのです。それぐらい、都市の男女の孤独は深刻で、むしろ普通ではないと思われる同性愛の人たちが健全な恋愛をしていることを際立たせたかったのです」

今、魏徳聖は次回作の歴史大作のために企画やコンテ作り、資金集めに奔走しており、長い準備期間のため、すぐに撮影が始まるわけではない。その間に一つの作品を作る時間があることに気づき、脚本はすぐに2〜3週間で書き上げた。曲を作ってもらい、役者を探した。

魏徳聖監督と筆者(提供:野嶋 剛)

「この映画では、文化の対立や歴史の負荷もなく、事実の検証も必要ない。撮影は1か月ちょっとでクランクインしてしまいました。その代わり、キャスト探しには随分時間をかけました。撮影は本当に楽しく、改めて、映画を撮るって本当に楽しいことだと思い出しました(笑)。『海角七号』のときは、台湾映画を立て直すんだ、自分はいい映画を撮るんだとまだ力んでいましたからね。携帯電話やパソコンばかりいじっていないで、どんどん相手にぶつかって、恋愛してほしい。この世にはチャンスがたくさんあるはずです」

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