蓮舫「二重国籍」問題に見る在日台湾人のジレンマ

政治・外交

岡野 翔太 【Profile】

「二重国籍」問題は誰に責任があるのか

日本の国籍法は1985年まで父兄血統主義を採用していたため、たとえ母が日本人であったとしても、父が中華民国国籍を有している限り、その子の蓮舫氏は中華民国国籍しか取得できなかったのである。一家は日本統治下の台湾に生まれ、その時代に「日本国籍」を持つ者として日本に渡り、戦後、「日本国籍」でなくなった者たちだ。

歴史にifは禁句だが、もし蓮舫氏が85年以降に生まれていたら、たとえ父が中華民国国籍を所持していたとしても、母が日本国籍であれば、生まれながらにして日本国籍を持つことができた。蓮舫氏の「二重国籍」問題の根底には、女性の声を無視したかつての「国籍法」、及び日本と台湾の複雑な歴史が絡み合っているのだ。蓮舫氏の「二重国籍」問題は単なる「個人」の問題として片付けられない。蓮舫氏がどのようにして「二重国籍」になったのか、これにもさまざまなケースがあるので一概には言えないが、台湾人の身分をここまで複雑にさせた日本は「当事者」である。

確かに、日本の政治家として自身の「二重国籍」疑惑について蓮舫氏の説明は不十分であったかも知れない。しかし、同氏は立法に携わる者として、こうした点をつまびらかにし、齟齬を小さくするように訴えかけるべき立場でもあるはずだ。蓮舫氏に課せられてた課題は、当人が思っている以上に重い。

バナー写真=民進党の蓮舫代表の「二重国籍」問題について開かれた記者会見で、記者に配布された資料、7月18日、東京・永田町の同党本部(時事)

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岡野 翔太OKANO Shōta経歴・執筆一覧を見る

大阪大学人間科学研究科博士課程。台湾名は葉翔太。1990年兵庫県神戸市生まれ。1980年代に来日した台湾人の父と日本人の母の間に生まれたハーフ。小学校、中学校は日本の華僑学校に進む。専攻は華僑華人学、台湾現代史、中国近現代史。著書に『交差する台湾認識-見え隠れする「国家」と「人びと」』(勉誠出版、2016年)。

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