日本語を脅かす外来語
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通勤電車の中で、どこから見ても中学生の2人組の会話が耳に入って気になったことがある。「お前! ノスタルジックな服装だなあ~」。彼らはノスタルジックな気持ちになるぐらい生きてきたのだろうかと不思議に思った。
2014年の6月ごろ、テレビ番組の中で使用される「コンシェルジュ」「リスク」「ケア」「トラブル」などの外来語により、テレビ番組の内容を理解できない(外来語が多く使用されている)という理由で精神的苦痛を負ったとして、岐阜県の71歳の男性が日本の公共放送であるNHKに対して慰謝料を求める訴えを名古屋地裁に起こしたというニュースが報道された。
外来語と在来語の併用は世界的にも異例
日本語の中の外来語は、例えば英語では「頭がいい」という意味で使われる「スマート」という単語が、日本語では「やせている」という意味に変わる転用型もあれば、「苺」と「ストロベリー」のように状況によって使い分ける併用型がある。
日本語に該当する言葉や概念がないため、別の言語をカタカナ表記することで取り入れるのであれば全く問題はないと思うのだが、日本語に対応する言葉があるにもかかわらずわざわざ外来語を受け入れ、取り入れるのはいかがなものか!
世界の言語からみても、外来語とそれと同じ意味を持つ在来語が一緒に使われているという意味で異例である。
現代の日本語において、和語は33%、漢語は49%、外来語(混種語と和製英語を含む)は18%という語彙分類となっている。外来語は、インターネットで使われる言葉から映画のタイトルに至るまで、あらゆる分野に侵入し、濫用されている。特に多い外来語は英語である。外来語は日本語をより豊かにするという考えを否定しないが、むやみに多用すると日本語の地位が脅かされてしまうのではと思ってしまう。
外来語は日本語への誇りを失わせる?
植物や魚類の世界でも外来種という言葉が使われているが、在来種を脅かすというイメージが強く、「外来」という言葉の響き自体からそうした種がいかにも危険なようなニュアンスが伝わってくる。だが、「外来語」となると不思議なことに危機感や危険度が薄れてしまう。
そんなに外来語は格好いいのか? そんなにステータスが高いのか? そんなに日本語って恥ずかしいのか? そんなにカタカナ語は洒落ているのか? 独立行政法人国立国語研究所は2002年に「外来語」委員会を設置し、分かりにくい176の外来語に関して、日本語への言い換えや補足説明など、具体的な言葉遣いの工夫を提案したが、残念ながらあまり反響を呼ばなかったようである。
ちなにみに国民的辞書であり百科辞典としても多くの日本人ユーザーに愛用されている『広辞苑』第6版には約24万語が収録されている。『コンサイスカタカナ語辞典』にはアルファベット略語8200語を合わせて5万6300語が収録されている。ざっくり計算してみても、現在使われている日本語の5分の1ぐらいは外来語である。この二つの辞書の収録語数から分かるように、日本語は外来語の増加によって、確実に変化していると言えよう。
日本語をこよなく愛しているとはいえ、外国人の私が偉そうに「日本語を守れ」とか「日本らしさが失われる」などとは言わない。だが、文部科学省が主導権を握り、中学校など早い段階で日本語への意識を高めるように教科書などの記載を工夫する必要があるのではないか。またクイズ番組などを通じて、すでに定着している、または定着してしまいそうなカタカナ用語を日本語へと言い換える意識を高めることもすべきではないか。外来語の使用を最小限にしてほしいと願わずにいられない。