日本人の中国観
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日本人の間に、中国に対する漠然とした不安感や嫌悪感が広がっていると言われる。
その理由の根底には、日本の現状に対する日本人の欲求不満があり、それが、中国の世界的進出と対比されているという事情もあろう。しかし同時に、日本人の中国に対する見方に幾つかの盲点があり、それが、対中感情に影響しているという側面もある。
そうした盲点の1つは、中国社会の現状、なかんずく地域や階級間の格差の激しさと、それが中国の将来に及ぼすべき影響についての認識である。
確かに、中国の飛躍的経済成長に伴って社会格差や地域格差が広がっていることは疑いない。しかし、もともと中国の歴史をみれば、共産党支配の初めの時代はむしろ例外であって、社会的格差は歴史的には常に、相当激しく存在していた。社会的格差の存在自体は、新しい、深刻な事態とは言い難い。加えて、中国の経済成長が続いている間は、たとえ格差が増大しても、昨日と比べて今日が良くなっているのであれば、民衆の不満は拡散されるであろう。
日本人の取るべき道
こうした見方に対して、中国全土で毎年何万件にもおよぶ抗議活動が行われていることを理由に、中国の将来を不安視する人々もいる。しかし、民衆の抗議行動は、多くの場合、土地利用や交通、食品、住居など市民生活と直結した事柄の行政的処理の仕方に対する不満を源としており、共産党一党独裁に対する不満のはけ口であり、その意味で政治的不安の源というよりも、むしろ一種の社会的緩衝材と考えられよう。
次に、日本人の嫌中感情に影響しているものに、中国における知的所有権の侵害問題や、食品の安全性の問題、さらには交通安全問題がある。確かに中国は、日本に比べ、こうした分野への対処の仕方に問題をかかえていることは事実であろう。しかし、こうした問題の故に困っているのは、誰よりも中国の民衆自体であり、中国が日本人に迷惑をかけているという日本人の感情はいささか狭量であろう。むしろこうした問題についての日中両国の共通の取り組みを奨励することこそ、日本の取るべき道であろう。
最後に、いわゆる歴史認識問題がある。いつまでも、中国が過去の歴史をとりあげてとやかく言うのは、日本に対するいわば「嫌がらせ外交」である、という見方だ。中国の対日政策に、そういう要素が全くなかったとは言えない。しかし、もともと中国人は、何事につけても、歴史の前例を引き合いに出して議論する人々である。中国人は、過去の出来事を基礎に置き、その解釈という形で、現在の状況を認識する。歴史歴史と中国が主張するからとて、日本人がいきりたつのはいささか大人げないのではあるまいか。
(2012年1月4日 記)