9万人が今も避難。震災関連死も:熊本地震発生から1週間

社会

熊本県で大きな被害が出た4月14日夜の強い地震から、21日で1週間。熊本、大分両県では今も1日70~80回にものぼる余震が続き、9万人以上が避難している。長びく避難生活のストレスから、高齢者を中心に震災関連死する人も出ている。降雨による新たな土砂災害発生も懸念される。

死者48人、関連死11人

熊本県によると、20日午後現在、地震による死者は48人。このほか土砂崩れに巻き込まれた可能性が高いなど、安否不明者が3人いる。住宅損壊は各自治体による状況の把握が進み、全壊が約1500棟、被害総数は8600棟前後に達した。

熊本県の被害状況(4月20日現在)

死者 48人
関連死 11人
安否不明 3人
負傷者 1153人(うち重症210人)
避難所数 623カ所
避難者 9万2314人
住宅被害 全壊1484棟
半壊1324棟
被害分類未確定含め全体で8600棟程度
断水 約9万8400戸

(熊本県まとめ)

20日現在、県外から派遣された緊急消防援助隊の約2000人が活動。自衛隊は人員約2万4000人、航空機135機を投入し、物資輸送や給水、避難者への給食提供に当たっている。

救援物資を被災地に輸送した米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ=2016年4月18日、熊本県南阿蘇村の白水運動公園(時事)

余震続く中、避難者の数減らず

気象庁は20日、16日未明のマグニチュード7.3の地震について、熊本県益城(ましき)町などで震度7を観測していたと発表。震度7は東日本大震災(2011年)の最大震度だが、この非常に強い揺れを一連の地震で2度も観測するのは、現行の観測システムでは初めて。

17日以降も余震はおさまらず、震度1以上の地震回数は20日に700回を超えた。気象庁の地震観測担当者は20日、「現時点で地震活動が収まる兆候が見えていない。いつまで続くかは見通せない」との見解を示した。

震度別地震回数(最大震度)

4月14日 15日 16日 17日 18日 19日 20日
震度1 12 30 20 29 19 24 18
2 10 51 70 70 33 33 40
3 6 19 67 28 22 20 15
4 9 10 36 11 4 2 1
5弱 1 1 4 0 0 1 0
5強 0 0 1 0 1 1 0
6弱 1 0 2 0 0 0 0
6強 0 1 1 0 0 0 0
7 1 0 1 0 0 0 0
回数 40 112 202 138 79 81 74
累計 40 152 354 492 571 652 726

気象庁発表データなどをもとに作成

夜中でも余震がひんぱんに起きることや、断水が10万戸近くに及んでいることもあり、自宅に戻れない避難者は20日現在、9万人以上いる。「プライバシーが保てない」「小さい子どもがいるので、避難所で夜を過ごすのに気兼ねする」などの理由で、家の近くや公園で“車中生活”をする住民も多いという。

自宅から避難した人であふれる避難所の保健福祉センター=2016年4月18日午後、熊本県益城町(時事)

懸念される震災関連死の増加

そんな中、新たに懸念されるのが疲労やストレスなどで被災者が体調を崩し、高齢者を中心に最悪の場合は死亡に至る「震災関連死」。熊本県は20日、これまでに震災関連死とみられる人が11人に上ったことを明らかにした。

この中には避難中、車中泊によるエコノミークラス症候群の疑いで死亡したケースも複数あるという。断水や、トイレが不便な状況から「被災者が水を飲むことを控える傾向も、体調悪化の大きな要因になる」と医療関係者は指摘。熊本県益城町では、ボランティアが車中生活を続ける被災者に注意を呼びかける“巡回パトロール”が実施された。

空の便は一部再開。新幹線復旧のめど立たず

インフラ関連では、熊本県内の停電は20日までにほぼ解消。ガス供給も熊本市の一部で再開された。携帯電話は、一部の地域でつながりにくい状態が続いている。

九州新幹線は、博多―新水俣間で復旧のめどが立っていない。空の便は、熊本空港発着の運航が一部再開。高速道路は熊本県内の多くの区間で通行止めが続いている。福岡―熊本を結ぶ高速バスは迂回(うかい)ルートを確保し、21日に運行を再開した。

バナー写真:4月16日未明に起きた地震で倒壊した民家=熊本県益城町(時事)

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