東京の大使館で「お茶会」ブーム

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各国の駐日大使館とのコラボによる、NPO主催の「お茶会」が人気を集めている。イベントの担い手は大使館側も日本側も元気な女性たちが中心。お茶会といっても単なるサロンではない。政府が目指す「女性が活躍する社会」「ソフトな文化交流」を実践する形で、各国との相互理解や友好促進を深めている。

「大使館でお茶を」

この文化交流の推進役となっているのはNPO法人「国際芸術家センター(IAC)」(金屋輝美代表理事、https://www.facebook.com/iactokyo/events)。国内外の芸術分野のみならず、食や伝統工芸、祭りなどの文化交流事業を通じて国際相互理解を目指す目的で、1960年から活動している。この実績を基に、昨年から始まった新たな試みが「大使館でお茶を」。IACが毎回、会員らを中心に参加者を募集し、これに呼応した各国大使館とホームパーティーのような形で開いている。

最大の魅力は、大使館で各国の歴史文化や生活習慣などの話を聞きながら、手づくりのクッキーや紅茶、時には家庭料理などを堪能し、日本に居ながらにして民族衣装や楽器なども楽しめることだ。これが市民レベルでの格好の相互理解・友好促進の場になっている。

2015年秋以降、タンザニア、ボツワナ、セルビア、アゼルバイジャンの各大使館で順次行われており、3月にはマダガスカル大使館でも開催される。大使館側の事情や予算の制約もあり、定員は毎回30人程度と少ないため、キャンセル待ちの状態になることもしばしば。

遠かったアフリカの国に親近感

例えば、初回のタンザニア大使館ではコーヒーやスパイス入り紅茶を賞味し、綿布カンガの着付けなどの伝統芸術にも触れた参加者からは、次のような感想が聞かれた。

「大使館に入ると、目にも鮮やかなティンガティンガの絵、躍動感あふれるマコンテ彫刻。そして素敵な民族衣装の女性が、皆さま全員外交官。女性大使が語る豊かな自然と歴史ある素晴らしい文化やマナー。特に敬語をはじめ、年長者に敬意を払い礼儀を重んじる文化に、日本から遠いアフリカの国が一足飛びに近く感じた」

これに対し、バチルダ・サルハ・ブリアン大使は「このイベントを通じタンザニアへの理解が深まり、日本でのわが国のイメージアップになることを確信しています。これからも一緒に両国の友好関係を深めていきたい」と丁重な挨拶。さらに、日本企業によるタンザニアへの投資を呼び掛けるとともに、同国内のセレンゲティ国立公園やセルー動物保護区、キリマンジャロ、ヴィクトリア湖などの人気観光スポットなどをPRした。

大使(左から2人目)を交えて歓談するお茶会の参加者(タンザニア大使館で)

各国のお国事情を学ぶ機会にも

アフリカ2カ国のお茶会に参加した人からは、次のようなコメントも寄せられた。

「これまでアフリカ諸国を一面的にしか見ていなかったことに気づいた。ボツアナは独立したころには世界最貧国の一つでしたが、独立後にダイヤモンド鉱脈が発見されたことで、計画的な国づくりを進め、今やアフリカの優等生と言われるほど豊かな国になり、教育費も医療費も無料だそうです。素晴らしい!」

お国紹介は必ず(ボツワナ大使館で)

セルビア大使館での交流では、同国の“親日ぶり”を参加者らが知った。2011年の東日本大震災の際、セルビア人から多くの励ましのメッセージとともに、同国の所得水準から考えると多額な義捐金が届けられた。その後、セルビアが2014年の大洪水に見舞われた折には日本からも支援金が届けられたという。この話が紹介されると、参加者一同が感激した。

大使館員お手製のクッキーを楽しむ参加者(セルビア大使館で)

アゼルバイジャン大使館のギュルセル・イスマイルザーデ大使は、流暢な日本語で自国を紹介。「わが国はソ連崩壊時の1991年に独立したイスラム国の中では初の民主主義共和国。女性が最初に選挙権を得た国でもあります」と語った上で、「国土は日本の四分の一程度だが天然資源に恵まれ、政教分離の下でイスラム教徒、キリスト教徒、ユダヤ教徒が共存して平和に暮らしている」と述べると、参加者からは「宗教絡みの争いが絶えないこの世界では稀有な国……」との感想も聞かれた。

大使自らレクチャー(アゼルバイジャン大使館で)

女性中心ゆえに相互交流も円滑

このお茶会が好評な理由を、IACの金屋代表理事は次のように語る。

「一般の人は普段、大使館にはなかなか入れないため、堅苦しいセミナーでもない気軽な文化交流の場として好評なのでしょうか。どの大使館でも女性外交官が熱心に準備し、ホスト役となりますが、日本側も国際交流に関心のある女性が多いため、会場の雰囲気はフレンドリーな中にも相互交流が浸透しやすい」

お茶会で女性外交官の存在が際立っていることについて、金屋氏は「男性外交官より数は少ないが、文化交流に力を入れようとする人が多い。大使からOKが出れば、あとは賢明な女性外交官を中心に動くので、企画もスムーズに進む」と歓迎する。日本側でこの活動を支援する人の中には男性もいるが、女性の割合が圧倒的に高い。その中には管理栄養士、調理師、ティーインストラクターなどの専門家や、ボランティア活動を行う語学堪能な人も少なくない。

文化交流は両想いでこそ継続可能

金屋氏は「このお茶会では、日本人参加者のみならずホスト役の各国外交官の皆さんも実に嬉しそう。文化交流は片想いでは継続しません。これからもこの企画を両想いで続けていきたい」と述べており、新たな大使館とのお茶会も折衝中だ。日本に大使館を置く国は現在153カ国。こうしたソフトな文化交流活動が、日本と各国との友好親善に寄与するのは間違いない。

カバー写真=民族衣装で文化紹介(アゼルバイジャン大使館で)

文・原田 和義(編集部)、写真協力・藤倉 明治(日本写真家協会)

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