和牛は今や世界の「WAGYU」:米国、オーストラリアに続き中国でも生産

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「おいしさ」で巻き返し図る和牛

最大の“売り”である霜降りで外国産WAGYUに肉薄され、食べ方でも赤身肉の攻勢を受けている和牛に果たして活路はあるのか。ミート・コンパニオンの植村常務は、「今の和牛の格付けはほとんど視覚的なもので決まっている。しかし、消費者が求めているのは見た目ではなく、おいしさだ。このおいしさをさらに追求していくと同時に、おいしさの秘密である『粘り、甘み、滑らかさ』の科学的解明にも取り組んでいる。和牛に熱を加えた時に出る『香り』の正体も明らかにしたい。それができれば、日本の和牛は鬼に金棒だ」と強調する。

日本の畜産関係者が今強く意識しているのはやはり海外市場だ。人口減少時代に入った国内市場は、これ以上の拡大は望めない。赤身肉が主流の欧米で霜降り肉を売るのは難しいが、一定の霜降り肉市場が存在するのも確か。ターゲットはこちらだ。

欧州連合(EU)向けに初輸出される高級和牛「神戸ビーフ」の前で、EUの食肉卸業者らと記念撮影する井戸敏三兵庫県知事(右端)=2014年7月8日、神戸市内(時事)

「世界には本物の和牛を食べたいという人たちがたくさんいる。何も、日本国内に固執する必要はない。アメリカの牛肉も日本に入ってきて、日本の牛肉も海外で買ってもらう。和牛の存続というのは、マーケットをグローバルな形で考えないと成り立たない。農産物も工業製品と同じだ。世界に目を向ければ、需要はいっぱいある」(植村氏)。和牛はもう日本だけのものではなく、世界共通の資源になっている。

文・長澤 孝昭(編集部)

バナー写真:宮崎牛のステーキ(時事)

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