軍艦島など23施設、ユネスコ世界文化遺産へ
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ユネスコが7月にも正式決定の公算
「軍艦島」として知られる端島炭鉱(長崎市)や三菱長崎造船所(同)、官営八幡製鉄所(北九州市)など、明治期の日本の近代化、産業化に大きな役割を果たした国内の23施設が、近く世界文化遺産に登録される見通しとなった。国際記念物遺跡会議(イコモス、本部パリ)が5月4日、「登録が適当」と国連教育科学文化機関(ユネスコ)に勧告した。
23施設は「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」として、日本政府が昨年世界文化遺産に推薦。イコモスが現地調査などを行い、審議していた。
勧告は、これらの遺産群について「西洋から非西洋国家に初めて産業化の波及が成功したことを示す」、「1853年から1910年までのわずか50年あまりの短期間で急速な産業化が達成された幕末、明治前期、明治後期の三つの段階を反映している」と評価。遺産の名称を「明治日本の産業革命遺産 製鉄・鉄鋼、造船、石炭産業」と変更するよう求めた。
ドイツ・ボンで7月に開かれるユネスコ世界遺産委員会で、登録の可否を正式決定する。日本の世界文化遺産は「富士山」「富岡製糸場と絹産業遺跡群」などが既に登録されており、「明治日本の産業革命遺産」で15件目。自然遺産を含めた世界遺産は19となる。
明治日本の産業革命遺産を構成する23施設
萩 | 萩反射炉 | 山口県萩市 |
恵美須ヶ鼻造船所跡 | 同上 | |
大板山たたら製鉄遺跡 | 同上 | |
萩城下町 | 同上 | |
松下村塾 | 同上 | |
鹿児島 | 旧集成館 | 鹿児島市 |
寺山炭窯跡 | 同上 | |
関吉の疎水溝 | 同上 | |
韮山 | 韮山反射炉 | 静岡県伊豆の国市 |
釜石 | 橋野鉄鉱山・高炉跡 | 岩手県釜石市 |
佐賀 | 三重津海軍所跡 | 佐賀市 |
長崎 | 小菅修船場跡 | 長崎市 |
三菱長崎造船所第三船渠 | 同上 | |
三菱長崎造船所ジャイアント・カンチレバークレーン | 同上 | |
三菱長崎造船所旧木型場 | 同上 | |
三菱長崎造船所占勝閣 | 同上 | |
高島炭坑 | 同上 | |
端島炭坑 | 同上 | |
旧グラバー住宅 | 同上 | |
三池 | 三池炭鉱(宮原坑、万田抗など)、三池港 | 福岡県大牟田市、熊本県荒尾市 |
三角西(旧)港 | 熊本県宇城市 | |
八幡 | 官営八幡製鉄所(旧本事務所、修繕工場など) | 福岡県北九州市 |
遠賀川水源地ポンプ室 | 福岡県中間市 |
稼働中の施設も登録対象に
23の施設は釜石、韮山、萩、八幡、三池、佐賀、長崎、鹿児島の8地域にあり、「西洋から非西洋への産業化の移転が成功したことを証言する」(内閣府)産業遺跡群として構成されている。
製鉄・鉄鋼産業では、大砲鋳造のため江戸末期の1857年につくられた韮山反射炉、日本で初めて高炉製鉄に成功した橋野鉄鉱山・高炉跡、日本初の近代的製鉄所とされる官営八幡製鉄所など。
造船業では、佐賀藩が外国から購入した蒸気船を修理するために開設した三重津海軍所跡、近代造船の中核となった三菱長崎造船所など。
石炭産業では、佐賀藩がトーマス・グラバーとともに開発し、日本の炭鉱近代化の先駆けとなった高島炭鉱、「炭鉱の島」として開発され、高品位炭を産出した端島炭鉱、明治期の炭鉱遺構が多く残る三池炭鉱などが選ばれている。
また、「日本の近代化の思想的な原点となった」松下村塾、長崎の旧グラバー住宅なども構成資産に含まれている。
施設には三菱長崎造船所の巨大なジャイアント・カンチレバークレーン、遠賀川水源地ポンプ室など、現在も稼働しているものもある。
バナー写真:世界文化遺産への登録勧告を受けた長崎市の端島炭鉱(通称・軍艦島)=2014年10月撮影(時事)