期待を乗せて北陸新幹線3月14日開業へ
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新車両「W7系/E7系」長野―金沢間で初お披露目
北陸新幹線の長野―金沢間が3月14日に開業する。その試乗会が2月上旬、報道関係者や一般向けに行われ、新たに開発されたJR西日本・東日本の「W7系/E7系」列車の運転が同区間で初披露された。5日に開催された試乗会では、W7系新幹線が3月から運行する「はくたか」(途中のほぼ全駅に停車)と同様の所要時間で金沢―長野間を往復した。
試乗列車は、金沢駅を午前9時56分に出発。すぐには気付かないほど静かで滑らかなスタートだったが、2分ほどで列車はぐんぐんと加速。最初のトンネルを抜けた直後、出発から8分後に車内放送が最高時速260キロメートル到達を伝えた。揺れはほとんどなく、走行は極めて安定していた。
その後2つ目のトンネルを通過すると富山県に。金沢出発からわずか25分で富山駅に到着した。
立山連峰の景観が見どころ
JR西日本によると、新開業区間は約4割がトンネルの中。だが、富山県内はトンネルが比較的少なく、車窓の景色をゆっくりと楽しめる。特に、立山連峰の眺めは、見どころの一つ。好天に恵まれたこの日、試乗列車からも雪をまとった美しい山々を望むことができた。
車内から立山連峰の景色を楽しむには、金沢・富山から東京方面に向かう時は進行方向右手、東京方面からは進行方向左手の席がおすすめだ。
立山連峰のふもとに近い黒部宇奈月温泉駅を出発するとトンネルが多くなる。富山・新潟県境や断崖絶壁で交通の難所として知られた親不知を通過すると、糸魚川駅付近で左手の窓に日本海が現れた。新開業区間で車内から最も間近に海を眺められる場所だ。
糸魚川駅を出ると、新潟県内の区間はほとんどがトンネルだ。だが上越妙高駅付近では、妙高山などの山々や、日本屈指の豪雪地帯である上越市高田地区の雪景色を見ることができた。
この後またトンネルを抜けて長野県へ。11時30分に長野駅に到着した。金沢―長野間片道の所要時間は1時間34分だった。
奥山清行氏監修のデザイン・コンセプトは「和の未来」
北陸新幹線は、長野五輪(1998年2月)開催に合わせ、1997年10月に高崎―長野間で開業した。これまでは長野新幹線と呼ばれてきたが、今回の金沢延伸を機に正式名称「北陸新幹線」が使われることになった。東京―高崎間は上越新幹線と線路を共用し、東京―金沢間を直通運転する。営業主体は東京―上越妙高間がJR東日本、上越妙高―金沢間がJR西日本。少しややこしいが、長野駅で運転士などの乗務員が交代する形で両社が共同で運行する。
「W7系」列車も、両社が共同で開発した(JR東日本では「E7系」)。デザインは、イタリアの高級スポーツ車フェラーリのデザインなどを手がけてきた奥山清行氏が監修。「和の未来」をコンセプトに掲げ、日本の伝統美と最新技術の機能美を合わせて追求した。
車体の外観はアイボリーホワイトをベースに、上部や側面に青色と銅色のラインが配されている。青色は北陸新幹線沿線の空、銅色は沿線地域の伝統工芸品である銅器や象嵌(ぞうがん)の色を表している。
車内の座席や壁なども、沿線をイメージさせるデザインが取り入れられた。JR西日本車両部の田中徳和担当部長は「金沢、富山、高岡の伝統工芸の色合い・文様を用いることで、北陸に向かう雰囲気を作りたい」と話す。
豪華座席「グランクラス」も登場
12両編成の車両は3つのクラスに分けられ、先頭1両は飛行機のファーストクラスに相当する「グランクラス」となる。一般的な鉄道車両よりも幅が広い新幹線の車両に、横2列+1列で配置された座席は18席のみ。45度まで傾斜できる電動リクライニングの本革シートにはレッグレストや読書灯が備えられている。
グランクラスは専任アテンダントによる車内サービスだけでなく、軽食やドリンク、菓子、アメニティ・グッズ、新聞・雑誌などが提供される。軽食は沿線各地の食材を使用し、季節感を演出したものになるほか、ドリンクも沿線ゆかりのものが用意されるという。
普通車は東京―長野間で運行される「あさま」用の「E2系」より、前の座席との幅が6センチ広くなっている。さらに、新幹線として初めて全座席に電源コンセントを備えており、他の乗客に気兼ねせずにパソコン、スマートフォンなどを充電できる。
列車内の洋式トイレは洗浄機能付き暖房便座で、車いす対応のトイレと洗面所が設けられるなど、設備は充実している。
東京―金沢、“1時間半短縮”の魅力
3月の新区間開業で、上越新幹線と在来線特急を乗り継いで約4時間かかっていた東京―金沢間が最速2時間28分と約1時間半短縮される。また、約3時間かかっていた東京―富山間も最速2時間8分になることから、沿線の地方自治体や住民の期待は大きい。
石川県は開業を機に、首都圏からの観光客を年500万人に、外国人観光客も年24万人(2013年)から50万人に増加させることを目標にしている。金沢は在来線の直通特急電車で京都まで約2時間20分。石川県国際観光課の大西洋彰さんは「東京―金沢―京都を新たなゴールデンルートとして外国人観光客に売り込んでいきたい」と話す。
北陸新幹線に対しては、隣の福井県の自治体も観光への効果を期待する。曹洞宗の大本山、永平寺がある永平寺町は、試乗会に合わせ、金沢駅でイメージキャラクターの「えい坊くん」とともに町をアピール。同町職員の中屋貴大さんは「関西や中京地方からの観光客に加え、首都圏からの観光客を増やしたい」と意気込んでいた。
期待高まる地元自治体も工事費を負担
すでにガラス張りの「もてなしドーム」や木製の「鼓門」を整備した金沢駅では、3月開業に合わせて新たに作られた新幹線の連絡通路に特産の加賀友禅と二俣和紙で飾られた案内表示板がお目見えしたほか、待合室には九谷焼や輪島塗など石川県内の伝統工芸品30品目236作品が展示される。プラットホームの60本の柱の上部には、金沢名産の金箔が施されたパネルを設置。使われた金箔は2万枚に上り、旅立ちの場所を華やかに演出する。こうした駅舎の整備を含め、石川県内自治体は北陸新幹線の工事にこれまで約830億円を負担している。
新幹線の開業をめぐっては、第3セクター化される並行在来線の経営安定化など、沿線地方自治体にとっては頭の痛い課題もある。そうした負の面を乗り越えるだけの経済効果が、果たして沿線にもたらされるのか。訪日外国人を含む、今後の観光客の集客状況が注目される。