灘校生とウェブセミナー開催:「危機の時代に生きる」テーマに
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公益財団法人ニッポンドットコムは4月5日、社会貢献活動の一環として、神戸市の灘中学校・高等学校とオンラインで結んだウェブセミナーを開催した。財団理事長の手嶋龍一(作家・外交ジャーナリスト)が「危機の時代を生き延びるために」を主なテーマに講演。高校1年生から3年生の約20人と質疑応答、意見交換を行った。
手嶋理事長は、20世紀に2度にわたり起こった世界大戦、米ソ冷戦の終結につながったベルリンの壁崩壊(1989年)、米中枢同時テロ(2001年)、東日本大震災(2011年)など、「世界の風景が一変してしまう」大事件の数々について解説。昨年から世界を襲っている「新型コロナウイルス感染症」についても世界の社会・経済システムや人の流れを一変させたとして、同様の衝撃度がある大事件だと指摘した。
その上で、「次世代を担う若い人たちは、この大事件がもたらす影響の本質を理解し、教訓を得て将来に進むことが必要だ」とアドバイス。新型コロナウイルスの起源をめぐる事実解明、ワクチン外交、感染封じ込めの成否からみる「権威主義vs.民主主義」の価値問い直しなど、日本政府のこれまでの対応の是非を含め、この一年で浮き彫りとなった数々の問題に向き合うことの重要性を強調した。
また、この激動の時代、日本が他国に比べ遅れをとっている分野の一つが「インテリジェンス」だと指摘。重要政策を判断するために、国家のトップリーダーに提供される”選りすぐりの情報”を収集・分析するシステムの構築・充実が必要だと述べた。
国際政治の分野ではこのほか、これまでの米中外交の変遷、台湾海峡をめぐる緊張と日米安保のかかわりなどについても重要ポイントを解説した。
同校は、春休みの期間に希望者が上京し、各界の第一線で活躍する人々に直接会って話を聞く「東京合宿」を2008年から実施。今年は新型コロナウイルス感染症の広がりを受け、ほとんどのケースでオンライン開催を余儀なくされた。プログラムは参加希望の高校生が自ら企画。講師の著書を読み込んだり、生徒同士の議論を通じて事前の質問項目を作成するなど、約4カ月かけて準備をしてきたという。
学生側の今回のセミナー担当者、川上龍之介さん(高校2年生)は、「どうメディアと接してどうやって自分なりにインテリジェンスをピックアップするかについて、貴重なご経験や圧倒的な知識量に基づく話を聞かせていただき、かけがえのない時間を過ごした。この経験を糧に、激動の時代を「賢く」生きられるような人物となるよう研鑽(けんさん)を続けたい」と話した。
バナー写真:灘校生とのウェブセミナーで講演したニッポンドットコム理事長・手嶋龍一(左)と、同校の宮田幸一良教諭=2021年4月5日、東京・虎ノ門