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出雲大社、60年ぶりの大遷宮

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出雲大社(島根県出雲市)と伊勢神宮(三重県伊勢市)とが、そろって遷宮を迎える。2013年(平成25年)は縁起のいい“ダブル遷宮”の年で、伊勢神宮は20年ごと、出雲大社が60年に一度のため、1953(昭和28)年以来60年ぶりのダブル遷宮となる。

縁結びで有名な出雲大社

出雲大社神楽殿の注練縄。神々の世界と一般の世界を隔てている。

出雲大社は、大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)をまつる神社だが、日本国民の間では何よりも「縁結びの神様」として知られる。歴史をさかのぼると、出雲大社は古代には、杵築大社(きづきたいしゃ、きづきのおおやしろ)と呼ばれていたが、1871年に出雲大社と改称された。

大国主大神が白兎に助言する場面を再現した御慈愛の御神像。

また、大社の御祭神である大国主大神は、童謡「だいこく様」にうたわれた「大きな袋を肩にかけ、だいこく様が来(き)かかると」の一節であまりにも有名。これは「因幡の素兎(いなばのしろうさぎ)」伝説から作られたもので、だいこく様が鰐(わに)に皮をむかれ丸裸にされたウサギを救った光景を童謡にしたものだ。

『古事記』によると、だいこく様はヤマタノオロチ(八岐大蛇)を退治した須佐之男命(すさのおのみこと)の6世の孫神と言われている。因幡の素兎で知られるような思いやりと弱きものを助ける神様のように見られているが、若いころには兄弟の嫉妬やいじめなどで生命の危機を2度も経験している。『古事記』では、そのたびに女神などによって蘇生してきたことから、「復活」「再生」の神様ともみられている。

さらに、だいこく様が、瑞穂(みずほ)の国(=日本)の国づくりを完遂するまでの物語は、『古事記』の他、『日本書紀』『風土記』など、多くの神話によって伝えられており、出雲大社は何よりも、日本の“神話のふるさと”だとも言える。

国宝本殿は1744年以来4度目の修造

出雲大社によると、遷宮は江戸初期の1609年からは、ほぼ60年に一度行われてきた。出雲大社が「蘇(よみがえ)りの思想」と説明しているように、大改修で本殿を新たにすることで、神が降臨した時代を再現し、力を取り戻した神様にお参りすることで、私たちにも再生の力を授かることになる。

24メートルの高さを誇る出雲大社の本殿。周囲にはこれより高い建造物はない。

出雲大社の縁結大祭には多くの人が訪れ、良縁を願う。

国宝である現在の御本殿は1744年に造営され、これまで3度の遷宮が行われている。「遷宮」とは、御神体や御神座を本来あったところから移し、社殿を修造し、再び御神体にお還りいただくこと。その理由は、木造建築の建物を維持していくためであるとともに、社殿の建築技術を継承していくための知恵だとも言われている。さらに、神社の清浄さをお守りするために遷宮を行い、「神の力」を新たにしていく必要から行われたものといった諸説がある。

本殿では、すでに2008年4月に「仮殿遷座祭(かりごてんせんざさい)」が執(と)り行われ、御祭神である大国主大神が御本殿から御仮殿に御遷座されている。翌年から、御本殿のみならず摂社・末社も、修造工事が進められてきた。

東日本大震災被災の材木も使用

本殿で5年前から行われていた大きな屋根の檜皮葺(ひわだぶき)の葺(ふ)きかえなどの大改修は終了し、新しく生まれ変わった御本殿がその姿を現わしている。東日本大震災で被害に遭った東北地方の木材も使用し、匠(たくみ)の技で壮麗な姿がよみがえった。仮の本殿に移っていた大国主大神を本殿に戻す「本殿遷座祭(ほんでんせんざさい)」も5月10日につつがなく執り行われた。

しかし、その後も境内周辺の建物の改修は続き、すべての修造を終えるのは3年後の予定。大遷宮にかかる予算総額は、約80億円に上る。「本殿遷座祭(ほんでんせんざさい)」の後も様々な奉祝行事・記念行事が執り行われており、摂社・末社の改修は2016年まで続けられる予定だ。

皇室関係者でも本殿まで入れない厳しいしきたり

明治維新に伴う近代社格制度下において、1871年に唯一「大社」を名乗る神社となった。「出雲大社」の読み方は、正式には「いずもおおやしろ」だが、一般には主に「いずもたいしゃ」と呼ばれている。

現在も、皇室の関係者であっても本殿内までは入れないしきたりを守り続けている。礼拝は、「二拝四拍手一拝」の作法で行う。全国各地の神社では、拍手は2回の「二拍」が普通だが、大社だけは 4回の「四拍」となっている。

平成の大遷宮は、“はじまりのとき”に立ち返るという壮大なよみがえりの物語であり、まさに出雲大社の「原点回帰」だと言える。出雲大社によると、遷宮を終えた神様にお参りすることで、「自分の原点を見つめ直し、生まれ変わる力や新しいご縁を授かることができます」としている。

八百万の神が集まるといわれる稲佐の浜。出雲大社の西に位置する。

文=原野 城治(一般財団法人ニッポンドットコム代表理事)
撮影=中野 晴生

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