特集「日本語を学ぶ」―はじめに
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増加する世界の日本語学習者
世界中で日本語学習者が増えている。国際交流基金による2009年の「海外日本語教育機関調査」によれば、日本語学習者は365万人、日本語教師は4万9千人に達しているという。2006年の学習者297万人、教師4万4千人から大幅に増加している。また同基金によれば、2011年の日本語能力検定試験は、日本国内外で61万人もの受験者がいたという。
日本語学習者は、日本に関心を持った人々、あるいは本人が望まずに学習していたとしても、“日本語”を通じて日本に接することになる人々である。そうした意味では、学習者の増加は歓迎すべきことなのかもしれない。もちろん、日本語が分からなければ日本が理解できない、ということはないだろうし、インドネシアやフィリピンなどから来日した看護師候補が直面したように、日本語が逆に日本社会に入る上での障壁のようになることもあろう。
だが、日本語学習者こそ、日本に関心を持ち、日本語を通じて日本を理解し、日本を海外に紹介していく“媒体”的存在であることもまた確かであろう。このnippon.comもまた、多言語で日本の情報やオピニオンを発信しているが、国内外で日本語を学ぶ人々にぜひ読んでいただきたいコンテンツを掲載しており、日本語学習者は想定される重要なユーザーである。
なぜ日本語を学ぶのか
この特集では、そうした日本語学習者に焦点を当てる。具体的には、増加し続けている日本語学習者はそもそもなぜ日本語を学ぶのか、そこから何を得ようとしているのか、あるいは得ているのか。その学習過程で何が課題になるのか。さらには、その日本語をもって日本社会に接したり、日本を理解しようすることには何か困難が伴うのか。こういったことは日本語のネイティブ話者には意外に意識されないことが少なくない。
例えば、日本語学習のきっかけが、かつては経済的な関心であるとか、就職に有利といったことがあったようだが、それが次第にポップカルチャーへの関心になってきているということは知識としてはある。しかし、ゲームや漫画から日本語に関心を持った学習者がその学習の成果をどう生かすのか、なかなか想像できない。果たして、そうした学習者は、より多くのゲームで遊んだり、漫画を読むことになるのか、あるいは日本の違う側面に関心を持っていくのだろうか。
世界の日本への目線を見つめる
このような趣旨を踏まえ、国内外で活躍する「日本語を話す外国人」に、日本語との出会い、日本との関わりなどについて半生を振り返っていただいた。ここでは、次の4名の方に寄稿をお願いした。日本語の小説家であるシリン・ネザマフィさん(イラン)、ロンドン大学東洋アフリカ研究学院(SOAS)で教壇に立つアンガス・ロッキャーさん(イギリス)、経済評論などで知られる沈才彬さん(中国)、NHKのドイツ語講座で活躍するマライ・メントラインさん(ドイツ)。
この特集を通じて、世界の日本への目線をあらためて見つめることができれば幸いである。