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日本の財政再建~1000兆円超す「国の借金」どう減らす?

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自民圧勝に終わった衆院選を受けて、第3次安倍内閣が引き続き取り組むべき経済政策課題は多い。短期的には正念場のデフレ脱却や景気回復へのテコ入れ策に迫られるが、中長期的にはアベノミクスの成長戦略推進とともに、消費税再増税を含む財政健全化に向けたイバラの道が続く。

日本国債の格付けは中国・韓国を下回る

安倍晋三首相は2014年11月中旬、解散・総選挙の方針を明らかにした中で、来年10月に予定されていた消費税再引き上げ(8%→10%)の先送りとともに、2020年度までに政府予算の基礎的財政収支(プライマリーバランス)(※1)の黒字化をめざす「財政健全化目標」の堅持を表明した。財政再建問題は、選挙の争点としては注目されなかったが、エコノミストら専門家は「それまでに財政健全化目標を達成するのは至難の業」と見ている。

消費税再引き上げの延期発表を受けて、米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは12月1日、日本国債の格付け(※2)を「Aa3」から「A1」に1段階引き下げた。財政赤字の削減目標が達成できるかどうか不確実性が高まった、と分析したためだ。A1という水準は21段階ある同社の格付けランクで上から5番目。中国や韓国を下回り、イスラエルやチェコ、オマーンなどと同水準である。

政府債務残高はOECD諸国内で最悪状態

財務省によると、国債や借入金などの残高を合計した「国の借金」は2014年9月末時点で1038兆9150億円に達する。10月1日現在の日本の推計人口(約1億2700万人)で割った国民1人当たりでは約817万円の借金を抱えていることになる。2015年3月末にはこの借金(債務残高)は1143兆9000億円に膨らむ見通しだ。

経済協力開発機構(OECD)がまとめた各国債務残高の国際比較(対GDP比)を見ると、日本の借金の突出ぶりが顕著である。わが国の政府債務残高の対GDP比率は2014年時点で231・9%に達し、フランス、英国、米国などの2倍以上だ。財政状況の悪化で経済危機を招いたギリシャよりも深刻な水準にある。

高齢化の中で膨らむ社会保障関係費

日本の財政状況を見ると、歳出(支出)規模に見合う歳入(収入)が慢性的に不足しており、その差額を国債発行などの「借金」で賄っている。これが財政赤字を膨らませている要因だ。とはいえ、歳入増を図り、歳出カットを大胆に実行することは容易ではない。削減どころか増え続ける歳出項目もある。

中でも、高齢者への年金医療介護保険給付費が増加を続けているのが際立っている。その割合は2014年度予算で、歳出総額(95兆8823億円)の約31・8%を占める社会保障関係費のほぼ4分の3に達する。人口の高齢化が進む中で、社会保障関係費を抑制することが容易ではないことを物語る数字だ。

ちなみに、国債費(利払い費および債務償還費の合計)の歳出総額に占める割合も2014年度で24・3%とほぼ4分の1に達する。つまり、国債費と社会保障関係費で予算の半分以上を占める。これが日本の「財政硬直化」の大きな要因となっている。政府債務残高が増え始めた1960年代後半以降、現在に至るまで日本はこの財政硬直化の問題を抱えてきた。

放置すれば国債の信認を失い、価格急落も

財政再建問題をこれ以上先送りすることはもはやできない。本格的な高齢化社会を迎え、財源の手当てなしに社会保障支出を増やし続ければ、財政健全化の道はさらに遠のく。そこで浮上したのが、民主党政権時代の2012年6月、自公民の三党が合意したいわゆる「社会保障・税一体改革」による社会保障の安定財源確保策だった。その後成立した増税関連法に基づき、今春の消費税引き上げが実施された。

東京オリンピックが開催される2020年度までに、財政健全化目標の達成が実現できるのかどうか、予断を許さない。金融市場は「日本が財政健全化に取り組む意思と能力を持っているか」を注視している。今後、日本国債のリスクが高まれば国債への信認が失われ、国債価格が急落(金利が急騰)する事態もありうる。

財政問題の解決に特効薬はない。政府は財政規律を維持し、財政健全化の道を着実に進まなければならない。具体的には、今回の増税先送りで得た猶予期間も使いながら、①デフレからの脱却を確実にし、日本経済を成長軌道に乗せる、②社会保障制度改革や行財政改革による財政削減の成果を出す——ことが求められる。

財政健全化の道筋つける責任

政府の長期債務残高はいまや、消費増税などで簡単に減らせる規模ではない。エコノミストは「歳出削減や増税だけでなく、経済成長しない限り日本の借金は減らない」と力説する。地道だが財政支出の無駄を減らす努力とともに、景気回復による税収増を基本とするしかない。そのためにも、アベノミクス「3本の矢」の実行力が問われる。

衆院選の結果を踏まえ、自公連立与党はさらに4年間の政権運営を託された。安倍首相が選挙戦中に連呼したように、現政権はアベノミクスによる「景気回復、この道しかない」のである。あわせて、盤石な政権基盤の下で、基礎的財政収支の黒字化に結び付く痛みを伴う制度改革・構造改革にも智恵を絞る必要がある。

カバー写真=財務省(提供・時事)

(※1) ^ 基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)…税収および税外収入と、国債費(国債の元本返済や利子の支払いにあてられる費用)を除く歳出との収支をいう。その時点で必要とされる政策的経費を、その時点の税収などでどれだけ賄えているかを示す指標となる。1990年代初めからPBは赤字が続き、政府はこの黒字化を財政健全化の「一里塚」と位置づけている。

(※2) ^ 格付け…国が発行する国債や企業が発行する債券などの支払い能力の安全性を順位付けすること。投資家はその順位を債券の安全度を判断する目安とする。格付け機関には米ムーディーズやS&P、日本では日本格付投資情報センターなどがある。

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