日本とアラブ:ジンクスもこんなに違う
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屋内で傘を開く、黒猫を見かける、コーヒーをこぼす、夜に爪を切ったり家の掃除をしたりする――。これらは、社会によっては不幸を招くと考えられていることだ。当然、それぞれの社会には不吉なことを警告すると考えられている特別な兆候や、それらの不幸を自身から遠ざけるための特別な作法があったりする。ところが、そのような兆候を不吉だと感じるのはなぜかと尋ねてみると、誰もが「先祖から子々孫々に受け継がれてきた習慣だから」という答えしか持っていないことに驚かされる。
西欧社会で、数字の「13」が最も不吉な忌み数とされているのは有名な話だ。その理由は、「最後の晩餐」に帰せられている。イエス・キリストを裏切ったユダが、13番目の弟子という説が世の中に広まったからというものだ。絞首台の階段が13段であったり、その他にも13にまつわる話はいろいろある。
凶兆か吉兆か
さて、はるか昔から現在に至るまで、アラブ人はフクロウとカラスが不吉な鳥であると感じ、災いを招くものと見なしている。人を罵倒したり侮辱するときに、これらの鳥の名を使うこともあるくらいだ。フクロウが不吉とされるのは、日中は不気味で孤立した場所にいて、夜しか姿を現さないと思われていることに由来する。また、かつては死んだ人の魂が、墓地に住むフクロウに変わると考えられていた。
カラスは、旧約聖書で人類初の殺人とされるカインとアベルの兄弟の物語を根拠に、殺人と結び付けられている。物語に登場するカラスは、カインに弟の遺体をどのように埋葬するかを教えた。また、カラスは他のカラスが死ぬと埋葬すると言われている。そこから死と埋葬の象徴となり、やがて凶兆と見なされるようになったのである。
逆に、日本の文化ではフクロウは吉祥であり、賢い鳥だと考えられている。「不苦労」=苦労しない、という漢字をあてる語呂合わせもあって、日本人は縁起のよい名を持つ、「福」を招く鳥だと感じている。
数字に読み取る「意味」
日本人が不吉だと感じることは、宗教的な理由やそれに関連するものではなく、言語的な理由によるものが多い。例えば、日本人は数字の「4」や「9」を不吉に思う。「死」や「苦」と同じ発音だからであり、ほぼ全ての病院には4や9の番号がついた病室がない。
このような傾向は、外来語に対してさえも同じようにある。花の「シクラメン」はその美しさにも関わらず、「死」と「苦」を連想させる名前から病人の見舞いにはふさわしくないと言われている。また、鉢植えの花も「根がつく」ことから入院中の病人を見舞う際には縁起が悪いと言われる。病人の病が長引き、あたかも植物が土に根を張るように、病院に根付くことにつながると、忌避されるのである。
他方、アラブやイスラム文化では、特定の数字に対して吉凶の相を見ることはない。もっとも、イスラムでは往々にして奇数を好む傾向はある。例えば、神は唯一(無二)であり、礼拝は1日に5回行う、巡礼の際にはメッカのカアバ神殿の周囲を7回巡る、更に天は第7天まで、地は7層から成っており、そして一週間は7日間である。
21世紀に入って、様々な分野で科学が進歩しても、人は信じていることや考え方をすぐに捨てられるわけではない。今もなお科学では説明がつかない事象が存在する以上、人間は無知を補うための科学に代わる説明を、ジンクスや象徴に求め続けるだろう。
バナー写真:Yuki Hirano