「皇女」創設が憲法問題を含めた新たな論議に:愛子さま20歳、眞子さま30歳となる2021年の皇室

社会 皇室

2021年の皇室は、二人の内親王(天皇の女性のお子、孫)が節目の年を迎えられる。天皇家の長女、愛子さまが20歳でいよいよ成年皇族となり、秋篠宮家の長女、眞子さまは30歳となる。20年秋、眞子さまの結婚が大きな問題となっている中で、政府が皇族減少による皇室の公務負担軽減策として、結婚した女性皇族に皇室活動を続けてもらう「皇女」制度の創設を検討していることが明らかになった。この制度の最初に、結婚後の眞子さまが想定されているという。

悠仁さまの将来を支えるために

皇女と聞くと、幕末に公武合体のため江戸幕府第14代将軍、徳川家茂に嫁いだ「皇女和宮」を思い出す方もいるだろう。仁孝天皇の第8皇女で、明治天皇の叔母に当たる。皇女とは、そもそも天皇の女のお子(娘)のことで、由緒ある呼称が突然、令和になって登場し、国民の注目を集めることになった。

皇室は現在、2つの大きな課題を抱えている。平成の天皇陛下(現上皇さま)の退位を実現する皇室典範特例法が成立した時の付帯決議が指摘した(1)安定的な皇位継承、(2)女性宮家の創設等―の2つであり、その検討を政府に求めた。

天皇ご一家(宮内庁ウェブサイトより)
天皇ご一家(宮内庁ウェブサイトより)

この「女性宮家」は、女性皇族が結婚後も皇室に残り、公務などを行うというもので、皇室の公務負担軽減策として考え出された。皇族が亡くなられたり、若い女性皇族が結婚されたりして減っていく中で、現行制度のまま秋篠宮家の長男、悠仁さまが将来、皇位を継いだ時、長姉の眞子さまらが悠仁さまを支えることができるようにとの思いも込められていた。

女性宮家については、宮家の当主の配偶者(夫)や子どもに皇族の身分を与えるかなど、検討すべき点が多くある。政府・自民党は歴代天皇の血を引く「男系男子」による皇位継承を重視しており、女性宮家の子が将来、天皇になる可能性を警戒する意見が多く、国会での審議はほとんど進んでいない。

女性宮家創設のネックとなったご結婚問題

さらに、女性宮家創設のネックとなってしまったのが、眞子さまと小室圭さんの結婚問題だ。女性宮家について国会などで真剣な論議を進めてほしいが、多くの国民が女性宮家の配偶者や将来生まれる子どものことで、感情的に反対することは明らかだ。

20年11月に、秋篠宮さまが次の天皇となることを国内外に知らせる「立皇嗣の礼」が行われ、それから間もない55歳の誕生日前の記者会見で、秋篠宮さまが「結婚を認める」と述べられた。だが、小室家の借金トラブルの対応などに多くの国民が納得せず、宮内庁には抗議電話が殺到するまでになった。

宮内庁関係者が「新年の一般参賀は『コロナ』の影響で取りやめになったが、もし行われたら大変なことになっただろう。本来なら立皇嗣の礼を済まされて、祝福されるはずの皇嗣秋篠宮さまらに、失礼な行動をとる人もいたはずだ」とこぼすほど、事態は深刻になっている。

女性宮家の代案として浮上した「皇女」

行き詰まってきた「女性宮家」に代わって、政府内で浮上したのが、今回の「皇女」制度の創設だ。結婚後の皇族女子を特別職の国家公務員とし、公務を続けてもらい、公務員としての手当てを支給する。対象は、愛子さまと、眞子さま、そして秋篠宮家の次女、佳子さまを想定しており、眞子さまが結婚すれば第1号となると予想されている。

秋篠宮ご一家(宮内庁ウェブサイトより)
秋篠宮ご一家(宮内庁ウェブサイトより)

「皇女」制度は、結婚して皇籍から離れた元皇族女子本人に限定されるので、皇位継承の問題とは切り離されており、「男系男子」による皇位継承にこだわる保守層の抵抗は小さいだろうと見られた。今回の「皇女」に似た案は、2012年の旧民主党政権でも論議され、「検討に値する」と評価されていた。

今回の「皇女」案に関連して、加藤勝信官房長官は「女性皇族の婚姻などによる皇族数の減少については、皇族方のご年齢からしても、先延ばしすることはできない、重要な課題だ。国民のコンセンサスを得るには十分な検討と慎重な手続きが必要だ」と語った。また、自民党の二階俊博幹事長は「国民の一人として好意的に見守っていきたい」と述べている。

一方、野党の立憲民主党、枝野幸男代表は「安定的な皇位継承を確保するための具体的な論議が何も聞こえてこない。まずこのことを最優先して徹底討論してもらいたい」と話し、ご負担軽減策の「皇女」の検討よりも先にすべきことがあるとの考えを示した。

国民民主党の玉木雄一郎代表も、「皇女」が皇位の安定継承に寄与するものではないとし、「皇女は天皇の娘を指す言葉だ。それ以外の女性皇族に使っていいのか」と疑問を投げ掛けた。

「皇女」は憲法違反に触れないか

女性宮家と「皇女」制度の大きな違いは、当事者となる皇族女子の身分にある。女性宮家はそのまま皇族であるのに対し、「皇女」は結婚して一般国民になっているので、憲法が全面的に適用される。

職業選択の自由(憲法22条)として、「皇女」を辞退することもあり得る。この点は国民民主党の玉木代表が、「一般国民なら任務を辞退する自由も当然保障される」とし、強制になってはいけないと述べている。例えば、結婚に際して1億円を超える「一時金」をもらった上、特別職の国家公務員としての手当てが保障されることに心苦しく感じた方が、辞退することもあるだろう。

また、「皇女」が法の下の平等を定めた憲法14条に触れないかと指摘する意見もある。「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。華族その他の貴族の制度は、これを認めない」の条文を読むと、微妙な感じもする。

「聞いていない」という宮内庁

宮内庁の幹部が記者会見で、「皇女」案について、「宮内庁としては聞いていない」と答えたという。これは宮内庁の一幹部が知らないというのではなく、天皇陛下や皇族方も知らなかったことを意味する。つまり、「皇女」案の当事者となる方々やご一家が承知していなかったらしい。

政府内の議論を、まだ検討段階なので宮内庁に報告していなかったのか、あるいは、その必要はないと判断されたのかは、明らかになっていない。政府は平成の終わりごろから何度も、「一連の皇位継承儀式終了後、安定的な皇位継承の在り方に関する議論を速やかに行う」と言ってきた。「新型コロナ」の影響で遅れているのだろうが、一連の儀式が終了したのだから重い腰を上げて、皇室の課題に関する議論を速やかに始めるべきではないか。

成年皇族となる愛子さまへの期待

愛子さま(宮内庁ウェブサイトより)
愛子さま(宮内庁ウェブサイトより)

新年(2021年)の皇室の明るい話題は、学習院大学文学部日本語日本文学科に進学した愛子さまが、12月1日の誕生日で20歳になり、成年皇族の仲間入りをされることだ。前例に従い、初めて一人で記者会見を行う。

愛子さまはその後、宮中の主な行事に天皇、皇后両陛下のそばで臨席することとなる。両陛下のお楽しみも増えていくはずだ。国民と皇室の間に溝が深まっているとも言われているだけに、愛子さまが新風を吹き込んでいかれることを、多くの国民が期待している。

バナー写真:天皇、皇后両陛下の長女愛子さま(左)と秋篠宮家の長女眞子さま(時事)

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