ニッポンのアイドル事情

ニッポンのアイドル事情(4) 未来のアイドルはどこへ行く?

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地下アイドルやご当地アイドルなどの形態が生まれ、多くの人がアイドルを目指し、実際になれる時代がやってきた。しかし、それに伴ってさまざまな問題が明るみに出てきた。これからアイドルはどうなっていくのか。その形はどのように変わっていくのか。作家でアイドル評論家の中森明夫氏に聞いた。

中森 明夫 NAKAMORI Akio

作家、アイドル評論家、コラムニスト、編集者。1960年三重県生まれ。現在、広く使われている「おたく」という言葉を生み出した。1980年代から多くのアイドルに取材し、アイドルの魅力を伝え続けている。主な著書に『アイドルにっぽん』『午前 32時の能年玲奈』『寂しさの力』『アイドルになりたい!』など。小説『アナーキー・イン・ザ・JP』は三島賞候補になった。

大資本なしでアイドルは全国、そして世界へ

ほかにも変化が起きているという。

「10年くらい前から“アイドル戦国時代”と言われてきましたが、2018年には『ベイビーレイズJAPAN』や『PASSPO☆』などの中堅アイドルグループが次々と解散しました。ビジネスモデルとして難しいということがあるのかもしれません。しかし、かつての『アイドル冬の時代』のようにはならないと思います」

どのように違うのか。

「テレビに依存せず、ライブとインターネットがあるからです。ピコ太郎が『ペンパイナッポーアッポーペン(PPAP)』を歌い踊る動画をネット上にアップし、世界中で大人気に。また、映画『カメラを止めるな!』は、たった制作費300万円で当初は劇場公開の予定もなかったにもかかわらず、口コミで大ヒット。お金をかけなくても世界的なヒットは生まれると証明された。僕は、これがアイドルでもできると思っています」

それは一体、どんなアイドルなのだろう。

「それは出てきてみないとわからない。アイドルとは、ファンとアイドルとの関係性でつくるジャンルです。だから芸能界のプロがどんなに計算してお金をかけても、思い通りにヒットしないことがある。そこが面白いところです」

NGT48の事件を見ても、いまやファンが運営にまで影響を与えている。

「2010年代の『会いに行けるアイドル』はコンテンツではなくて、握手会などのコミュニケーションをビジネスにした。それに対しては批判もある。しかし、コミュニケーションの形が握手なのかは別にして、その流れは変わらないと思います。高校に野球部があるようにアイドル部ができ、高校野球のスターのようにそこからスターが生まれ、野球が東京の巨人一強から全国のチームに人気が広がったように、アイドルもファンとコミュニケーションを取りながら全国に、そして世界に広がっていく。今、それは起こり始めていると思います」

取材・文:桑原 利佳(POWER NEWS編集部)

バナー写真:大阪府の2019年統一地方選挙啓発動画で踊る登美丘高校ダンス部員ら=大阪府提供(時事)

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