沖縄唯一の鉄道「ゆいレール」:4駅延伸で、那覇観光がもっと便利に!
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日本最南端、最西端を走る沖縄都市モノレール線。助け合いや共生を意味する沖縄方言「ゆい(結い)まーる(順番)」と「モノレール」を組み合わせた「ゆいレール」の愛称で親しまれている。
沖縄の玄関口・那覇空港を起点に、オフィス街、観光地としても知られる国際通り、世界遺産の首里城などにアクセスできる。市内の渋滞を避けてスムーズで快適な移動ができる上に、高架線路の車窓からの眺望も格別だ。
2003年8月、「那覇空港」と「首里」を結ぶ約13キロ区間で開業。19年10月1日に「てだこ浦西」駅までの4駅延伸し、総延長17キロとなった。
沿線に見どころが増えたので、お得な乗車券などを活用して、沖縄中心地をじっくりと楽しみたい。フリー乗車券は、1日券(大人800円、小学生400円)と2日券(同1400円、700円 )の2種類。1日券は24時間、2日券は48時間有効なので、日をまたいで使用することも可能。利用当日限定だが、那覇バスとの1日共通券「1dayパスポート」(大人1000円、小学生500円)もあるので、日程や目的地によって使い分けよう。
新しい終点「てだこ浦西」駅で高速道路と連結
延伸区間で一番注目されるのは、終点の「てだこ浦西」駅だ。那覇市から名護市までを縦断する高速道路「沖縄自動車道(沖縄道)」とゆいレールをつなげる役割を持ち、約1000台が収容できる大型の立体駐車場を備える。
駅と直結する「幸地インターチェンジ(IC)」は2024年の完成予定だが、すでに駐車場はオープンしているので、車で5分ほどの「西原IC」を利用すれば沖縄道からのパーク&ライドが可能。地元住民は、中心街への通勤や那覇空港を訪れる際に、車からゆいレールに乗り換えることで、市内の渋滞を避けてスムーズに移動できるようになった。
観光客にとっても、ありがたい駅だ。沖縄本島の人気リゾートホテルは、県中西部の恩納村から北部の名護エリアに多く、近年はレンタカー付きのパックが主流。旅行期間中は全て車移動という人も少なくないが、那覇観光では渋滞に巻き込まれたり、駐車場探しに苦労したりする。市街地観光を満喫したい人は、てだこ浦西駅でのパーク&ライドも選択肢として検討してみては?
高速バスターミナルも整備中なので、完成すれば、那覇市内からの万座毛や恩納村などの中部エリア、北西部にある「美ら海水族館(本部町)」への観光などもスムーズになるだろう。
浦添グスクなど魅力ある新駅最寄りのスポット
てだこ浦西駅の隣「浦添前田駅」からは、巨大な「浦添グスク(城跡)」まで徒歩15分。14世紀から15世紀初頭まで、沖縄本島は北山、中山、南山という3つの勢力が支配していたが、その三山時代に中山王城だったのが浦添グスクだ。
1609年の薩摩軍の琉球侵攻で建物などは焼失。その後、王陵「浦添ようどれ」を拡張して、琉球王国の第二尚氏王統第7代国王の尚寧(1564-1620)一族が眠った。第2次世界大戦で日本軍の防衛拠点となったために大半の遺構や石垣が破壊されたが、現在は復元して国の史跡となっている。
「経塚駅」近くの丘の上には、沖縄の伝統芸能「組踊(くみおどり、くみうどぅい)」の創始者「玉城朝薫(たまぐすくちょうくん)の墓」がある。ゆいレールは墓の真上を通るのを避けるため、経塚駅近くで大きくカーブしている。歌舞劇の組踊は、2010年にユネスコの無形文化遺産に登録され、19年には上演300周年を迎えている。
「石嶺」駅と首里駅の間には、創業100年以上の老舗「ぎぼまんじゅう」が店を構える。首里名物の「のまんじゅう」の鮮やかな「の」の字は「熨斗(のし)」を表現しており、お祝いの席には欠かせない。きぼまんじゅうでは、出来たてのアツアツのまんじゅうに、その場で「の」の字を書いてもらえるのも嬉しい。
世界遺産・首里城など既存区間も堪能しよう
既存区間の観光名所を巡る場合、やはり外せないのは首里駅だ。2000年に「琉球(りゅうきゅう)王国のグスク及び関連遺産群」として世界遺産に登録された首里城まで徒歩15分、足を延ばせば「玉陵」にも行ける。
15世紀初頭に中山を治め、その後三山を統一した尚巴志(しょう・はし)が居城と定めた琉球王朝の中心地・首里城。2019年10月31日に発生した火災で、正殿と北殿、南殿が全焼したほか、計7棟の建屋、延べ4800平方メートルが焼失した。現在、被災区域周辺は立ち入り制限されているが、安全確認ができた場所から開園区域を拡大している。再建を後押しする意味でも、ぜひ訪れてほしい。
1501年に築かれた琉球王家の墓・玉陵は、首里城・守礼門から徒歩3分程度。当時の板葺(ぶ)き屋根の宮殿を模した石造建造物で、周囲を囲む美しい石垣が印象的だ。
約1.6キロ続く観光ストリート「国際通り」は、戦後の沖縄で、いち早く目覚しい発展を遂げたことから「奇跡の1マイル」とも呼ばれている。通りの北側にアクセスするには「牧志」駅、南側なら「県庁前」駅が便利だ。土産物の購入はもちろん、沖縄牛を扱うステーキハウスなど飲食店も充実しているので、地元グルメを楽しむのもおすすめ。
牧志駅は、カラフルな魚や豚の顔や豚足など、沖縄らしい食材を所狭しと並べる「第一牧志公設市場」の最寄り駅としても知られる。レトロな雰囲気が人気だったが、2022年3月末まで建て替え整備のため、徒歩2分ほどの「にぎわい広場」で仮設市場が開かれている。
「安里」駅からは、人気の観光スポット「壺屋やちむん通り」まで徒歩約7分。「やちむん」は「焼き物」の沖縄風の発音。南国の風土を感じさせる素朴で、どっしりとした風合いの陶器だ。力強く、色鮮やかな絵付けにも特徴がある。一帯には窯元兼販売所が集まり、やちむんの器で飲食ができるカフェなどもある。
安里駅周辺には沖縄の名物・ヤギ料理の有名店も多い。本土ではめったにお目にかかれないヤギ汁や刺し身を、一度試してみては?
全区間の片道の所要時間は約40分。その間には他にも、大型免税店「Tギャラリア 沖縄 by DFS」に直結する「おもろまち」駅、那覇バスターミナルや那覇港那覇ふ頭への連絡が可能な「旭橋」駅などがある。
20年春には「Suica」など交通系ICカードが利用可能になり、3両編成に増やす計画も進行中。ますます便利になるゆいレールを上手に活用して、那覇観光を堪能してほしい。
取材・文・写真= 黒岩 正和(96BOX)