【ブルゴーニュがやってきた】ライカ北紀行 ―函館― 第88回
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良いワインをつくるため函館に進出する、と地元でのセミナーで熱く語ったエティエンヌ・ド・モンティーユさん。フランス革命前からブルゴーニュ・ヴォルネイに居をかまえる名門ワイナリーの当主である。
じつは、僕は、彼のつくるワインのファン。長い年月をかさね熟成して飲みごろになり、その芳醇で繊細な仕上がりは優雅、この一言である。
彼と日本ワインとの出会いは、ニセコに家族とスキー旅行にきたとき。そこで、北海道のワインを味わって、その大きな可能性を感じたという。
それ以来、地元のブルゴーニュ大学の協力をえて北海道や長野の地質・土壌・気候を調べあげ、北海道は赤ブドウの品種ピノ・ノワールの産地になりうると確信し、函館にターゲットを絞りこんだ。ブルゴーニュでのワインづくりの経験があり、友人でもある農楽蔵(のらくら)の佐々木賢さんが、函館でワイナリーを営んでいることも決断を後押しした大きな要因となった。
世界各地のワインづくりの実態を撮ってワイン好きの間で話題を呼んだドキュメンタリー映画「モンドヴィーノ」。
その主役の一人にユベール・ド・モンティーユが登場する。エティエンヌの父だ。彼は当世流行の飲みやすい早飲みタイプの没個性ワインに批判的だった。ブルゴーニュのテロワール(ブドウ畑を取り巻く自然環境)を生かした長期間かけて熟成する優雅なワインづくりに頑固一徹にこだわった一生であった(2014年に死去)。
遠くはなれた函館で、次世代に伝わる100年先までつづくワイナリーを目指す息子のことを聞いたら、天国の親父は喜ぶだろう、とエティエンヌさん。やはり、息子も父の気質をうけついでいるのだ。
2016年に始動した函館の入植プロジェクト「ド・モンティーユ&北海道」は、桔梗(ききょう)の丘で試行錯誤を重ねながら着々と進んでいる。19年に苗木初植樹、23年にワイナリー完成、醸造を目指す。すでに農地も30ヘクタール所有している。
埋もれていた函館の可能性を見出してくれたエティエンヌさんに、地元は感謝しなければならない。土地のテロワールをもったワインづくりには時間がかかる。良い苗に良いブドウが実り、良いブドウから良いワインができる。
彼の決断に敬意をもって応援しよう。将来は、カリフォルニアワインの聖地ナパ・ヴァレーならぬ函館ヴァレーの先駆けとなって欲しい。
●道案内
ド・モンティーユ&北海道 函館インターチェンジから車で8分 (地図へ)
ド・モンティーユ&北海道