【三厩の本マグロ】鮨おおね田  ライカ北紀行 ―森― 第82回

幕末、品川沖を脱走した榎本武揚ひきいる旧幕府艦隊が新選組・土方歳三などをのせ、官軍が守る箱館をさけて上陸したのが森の鷲ノ木であった。

その森に函館から北へ特急に40分ゆられて着き、駅から5分ほどの鮨屋に急いだ。今回で二度目の鮨おおね田。

鮨おおね田の店構え(2021)
鮨おおね田の店構え(2021)

なにせ、ミシュランひとつ星に選ばれた鮨の名店なのだ。鮨職人・大根田茂樹。森から上京して銀座7丁目の乾山(けんざん)で江戸前の修業を14年、さらに函館で人気の鮨処木はら、梅の寿司で腕をみがき、そのあと故郷へもどって開業して13年あまり。

お店の大将、大根田茂樹さん(2021)
お店の大将、大根田茂樹さん(2021)

初めておとずれたとき、おまかせの第一弾は、見慣れない色模様のマグロ中トロ。聞くとボストンマグロ?  えっ!

三厩の本マグロ中トロ(2021)
三厩の本マグロ中トロ(2021)

そのとたん、30年ほどまえのニューヨークはイーストヴィレッジの寿司屋の情景が浮かんだ。そのときのマグロもボストン沖で獲れたもの。旨かったが、ターバンを巻いたインド人の寿司職人にはびっくり。さすが世界のニューヨークにはなんでもある、と。

今回のマグロは、津軽海峡・大間ちかくの三厩(みんまや)でとれた本マグロ。そのにぎりは味わいがゆたか。ああ、しあわせ。

地元の噴火湾でとれ、素材を生かした職人の気合充分なおつまみには、蛸のやわらか煮、鮑(あわび)の酒蒸し。

にぎっては、ボタン海老、毛がに、ヒラメ、穴子、ホッキなどがつぎつぎと。〆に、キングサーモン(ますのすけ)。もちろん、これも噴火湾産だ。

キングサーモン(2021)
キングサーモン(2021)

見事なのは、海苔を巻かずシャリに乗っけたうにといくらのコラボ。シンプルな素材勝負、職人の心と技がひかる。

イクラ(2021)
イクラ(2021)

森といえば、イカめしだけと思いこんでいた。噴火湾のめぐみを味わいたければ、鮨おおね田に行くべし。

●道案内
鮨おおね田  JR函館本線 森駅下車、徒歩5分(地図へ

観光 北海道 ライカ北紀行 森町 鮨おおね田