【東海の小島の磯】石川啄木 ライカ北紀行 —函館— 第39回
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天気が良いので、コンブ、イカ、ウニの匂いがただよう大森浜の砂をふんで、啄木小公園から函館山へむかってそぞろ歩いた。目に飛びこんできたのは、浜辺にたつ白亜の館。陽の光に輝いている。まるで、“エーゲ海の白い宝石”といわれるミコノス島の白いペンキを塗りたくった家のようだ。いきなり現れたギリシャにどっきり。
真っ白に輝く館は、ヘア&メイク「ルルーディー Luluwdy」。店の名前は、ギリシャ語で“花”を意味するとか。白髪頭の“枯れ氏”でも散髪、いやカットしてもらえるだろうか。お洒落な店のなかを思い浮かべては、いつも入ろうか否か、迷っている。
石川啄木は、大森浜の浜辺を散策して『一握の砂』を詠んだ。
東海の小島の磯の白砂に
われ泣きぬれて
蟹とたはむる
―我を愛する歌潮かをる北の浜辺の
砂山のかの浜薔薇(はまなす)よ
今年も咲けるや
―忘れがたき人人
浜辺の潮騒のなか、啄木のつぶやきが聞こえた—小さな蟹は足元を這いまわるが、あの砂山は消えてしまった。向うに見える白亜の館は何だ? ここは、エーゲ海の浜辺か。はて、東海の小島の磯をどう歌うか……。思案のしどころだな……。
●道案内
啄木小公園 バス「啄木小公園前」から徒歩1分(地図へ)