【神父の告白】 ライカ北紀行 —函館— 第33回
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「グロードさん、なぜ、神父になられたのか」
雑談のなかで、僕が投げたこの直球にぽろりと本音をもらしたことがある。フランス西部のブルジョアの生まれだが、子供のころは手がつけられない悪ガキであったフィリップ・グロード神父。腕白で悪戯ばかりして学校を退学になり、家で勉強して大学入学資格試験・バカロレアに受かった。元の学校の先生に、神父になりたいと言ったら、おまえのような奴は、暴力団に入るか、神父になるしかないだろう、と。
28歳のときに、フランスから函館のカトリック元町教会に赴任して半世紀あまり。ウィットに富み、函館が大好きな神父を語らずして函館を語ることなかれ。日仏の文化交流、先進的な高齢者向け福祉介護施設「旭ヶ岡の家」、今夏33年目を迎える五稜郭公園の「市民創作 函館野外劇」を立ちあげたその存在は、函館の宝といえる。
「聖母マリアの処女受胎なんて信じられない」
この素朴な、否、愚かな? 直球にも、近いうちにゆっくりお話をしましょう。こう応えてくれたが、8年まえ、降誕祭の日に逝ってしまわれた。 85歳。マリア受胎のまこと、残念なことに聞きそびれてしまった。