和式トイレは風前のともしび:災害やインバウンド対応で洋式化進む
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今では、世界から賞賛される温水洗浄便座が多くの家庭に普及しているが、1960年代までの日本では、しゃがみ込み式の和式のトイレが主流だった。1959年に日本住宅公団(現・都市再生機構)が洋式トイレを採用したことがきっかけとなり、洋式便器が徐々に普及していく。衛生陶器大手のTOTOによると、1976年に和式便器と洋式便器の出荷数がほぼ同数となり、その後、急速に洋式化が進んだという。2015年には和式便器が1%を切るまでになった。
地震や台風などの災害時に避難所が設営される公立の小中学校では、トイレを和式から洋式に変更する動きが進んでいる。2016年4月の熊本地震や、18年9月の北海道地震では、高齢者が和式を嫌がり、洋式トイレに列を作る事態となったためだ。足腰の弱った高齢者には、しゃがまなくてはならない和式トイレは使いづらく、トイレを我慢したり、水分を取るのを控えたりする人も多かったという。
文部科学省が16年11月に実施した調査によると、全国の公立小中学校のトイレの約6割が和式だった。政府は洋式トイレの割合を今後3年以内に8割まで引き上げる方向で検討を進めている。
観光庁の2016年の調査では、国内の主な観光地の約4000カ所の公衆トイレのうち40%が和式だった。一部には「不特定多数の人が座った便器に肌が直接触れるのはイヤだ」という根強い和式派もいるが、最近では、洋式の方が圧倒的に好まれる。特に、訪日外国人旅行者からは、和式トイレについて「使い方がわからない」「不潔な印象」など戸惑いの声が上がっているという。
このため、東京都では2020年東京五輪・パラリンピックに向けて洋式トイレの整備を進めている。東京メトロでは全179駅の全てを洋式化、都営地下鉄では洋式比率を従来の60%から95%まで引き上げる予定だ。
バナー写真=PIXTA