国際比較で見た日本の「安全」
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犯罪件数は11年連続減、検挙率は3割
法務省の2012年版『犯罪白書』によると、国内での刑法犯の認知件数(警察が把握した犯罪の発生数)は2002年に約285万件と戦後最多に達したが、2003年以降、減少に転じている。刑法犯の過半数を占める窃盗の認知件数が毎年減少したことが大きな要因だ。警察庁の犯罪統計では、2013年の刑法犯認知件数は約132万件となり、11年連続で減少した。
一方、検挙率は2001年に刑法犯総数で38・8%、一般刑法犯で19・8%と戦後最低を記録したが、2002年からは上昇に転じ、2006年以降は横ばいで推移。2012年には刑法犯総数で53・1%、一般刑法犯で31・7%まで上昇した。殺人や強盗などの凶悪犯、暴行や脅迫などの粗暴犯の検挙率は高い水準を維持しているが、自転車など乗り物の窃盗や器物損壊など、日常生活の周辺で起きた犯罪は件数も多いため検挙率は低い。
ストーカー殺人や女児監禁事件など、世間を騒がせた犯罪は大きく報道されるが、身近で起きた犯罪で未解決なものは多い。このため犯罪認知件数が減っていても、市民感覚では「治安が良くなった」との認識が広がりにくい。近年では、高齢者を狙った振り込め詐欺(恐喝)や薬物犯罪が多発。さらに、コンピューターネットワークを利用したサイバー犯罪(ネット犯罪)なども件数や規模が増大し、市民生活を脅かしている。
OECD諸国内では犯罪率は最低水準
こうした日本の犯罪状況は、諸外国と比べてどうなのか。各国の犯罪統計を比べても、国の法体系上、軽犯罪をどこまで含めるか、被害者がどれだけ被害を警察に届けるかなどが国によって異なるため単純比較は難しい。そこで、少し古い統計だが、一定期間に一定の犯罪の被害状況を国際比較した国連の「国際犯罪被害者調査」(※1)結果で見てみよう。
強盗や恐喝、窃盗など在来型10犯罪(※2)の被害者率を見ると、日本の犯罪率は2005年時点で9・9%と、OECD加盟国の中ではスペインに次いで2番目に低かった。うち凶悪犯罪(殺人・強盗・強姦・暴行)の発生率は、いずれもOECD諸国中で最下位だった。日本の犯罪率は1990年に8・5%だったが、2000年には11・9%に増加したものの、2005年には再び9・9%に減少している。
窃盗の大半を占める自転車泥棒など軽微な犯罪についても、日本は世界で最も取り締まりが厳しいとされ、国内で発表される『犯罪白書』などの年次統計を見ても、近年は犯罪数そのものが減少傾向にある。こうした統計から判断すると、日本は「世界で最も安全な国の一つ」に属していると言える。ただし、犯罪率が最低水準でも「治安への不安」を感じる人はなお多い。
「世界の平和度順位」でも日本は上位に
「世界平和度指数」(※3)という指標もある。英国の『エコノミスト』誌が犯罪統計のみならず、各国の内戦や対外戦、近隣国との関係、暴動の可能性など24項目にわたり対象国・地域の分析を試み、当該国の平和度を相対的に数値化したものだ。それによると、日本の平和度順位は2012年が158ヵ国中5位、2013年は6位にランクイン。ちなみに2007~09年は5~7位、2010~11年は3位で推移、「安心して暮らせる国」の上位を維持している。
海外旅行者からは「世界で一番安全」の評価も
2011年3月の東日本大震災の際、被災地で商店の略奪や暴動なども起きず、被災者らが救援物資を順番に待つ光景などが海外メディアで紹介された。日本の治安の良さとともに、パニック状態でも冷静な日本人の国民性が海外から賞賛された。
日本が「安全な国」との評価は、訪日外国人らがネット上に書き込んだ体験談などにも表れている。例えば、「カメラや携帯電話をレストランやカフェに置き忘れても盗まれずに保管されている」「夜道を若い女性が一人でも安心して歩ける」「日本の女性はバッグをしっかり閉めずに持ち歩いている」ことなどに驚き、自国と比較しながら“日本は世界一安全な国”と絶賛する声も少なくない。
国内にはさまざまな犯罪や事件・事故は絶えないが、それでも相対的に見て「日本は安全な国」と海外から評価されている事実にも留意したい。
(※1) ^ 「国際犯罪被害者調査」…国連地域間犯罪司法研究所(UNICRI)と国連薬物・犯罪局(UNDOC)がOECD加盟国のうち26カ国を対象に実施(2009年時点)。
(※2) ^ 在来型10犯罪…自動車泥棒、車上荒らし、オートバイ泥棒、自転車泥棒、侵入窃盗、窃盗未遂、置き引き・すり、強盗、女性に対する性犯罪、暴行・恐喝の10犯罪。
(※3) ^ 「世界平和度指数」…英誌「エコノミスト」が内戦や対外戦、近隣国との関係、暴動の可能性、小型兵器の入手しやすさ、殺人件数など24項目にわたり世界の国・地域を対象に毎年分析。各国・地域がどれくらい平和かを数値化したもの。この指標の評価には、国や立場によって賛否両論ある。